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ダッチ・デザイン・ウィーク2024 訪問報告会

毎年10月にオランダのアイントホーフェンで開催されるデザインイベント「ダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week: DDW)」を、デザイナーの厚見 桃香さんと西村 俊亮さんが視察しました。DDWは、市内の至るところで展示会やワークショップ、セミナーなどが行われる世界最大級のデザインイベントです。アイントホーフェンの学生やデザイナーが参加しており、最新トレンドや未来の方向性を垣間見ることができます。

今回の視察で二人はDDWを見学したほか、アムステルダムやフィンランドのヘルシンキを訪問。約9日間にわたる視察の中から、特に印象的だった展示について報告しました。

現地でのさまざまな体験を報告する厚見さん(左)と西村さん (右)

世界のプラスチック廃棄物が2060年までに現在の3倍になると予想されていることから、今回のDDWでは廃棄物が出ない次世代の製造方法として、3Dプリントの魅力を引き出すデザインの研究事例が多く紹介されていました。また、サスティナブルマテリアルとして菌糸体に注目した展示では、建材やパッケージ、他の素材との結合剤など、汎用性の高い素材としてさまざまなものへの活用が模索されていました。

上段:3Dプリント 下段:菌糸体

一方、DDWを運営しているオランダデザイン財団が文部科学省と行っているプログラムでは、デザイン思考が社会課題解決に有用だと広く伝えていました。さらに、オランダのデザイナーが公共事業に参画して社会課題に取り組む機会が増えている中で、デザイナーと政府職員が立場や考え方の違いを超え、お互いに協力するためのアドバイスが展示されていました。

日本人クリエイターの 展示もありました。デザインユニット「MAGNET」による展示「Touch Planet」では、触覚をテーマにしたゲームをいくつか体験しました。言語の壁、身体的特長、関係性の壁を越えてコミュニケーションが生まれる体験デザインとなっていました。

アムステルダムやフィンランドのヘルシンキも訪れました。アムステルダムでは各地のミュージアム、アアルトの自邸のほか、家電量販店や薬局なども視察しました。アムステルダム市立美術館(Stedelijk Museum)では、美術館全体のビジュアルアイデンティティーに注目。文字と罫線を使った緩い制約を設けたデザインは、さまざまな場所で美術館が持つ自由なコンセプトを伝えながら、統一感を持って展開されていました。

さらに、公共施設のデザインとして世界的に評価されているヘルシンキ中央図書館「Oodi」も紹介。家具が低く柱が少ない広々とした空間デザインや、3Dプリンターなどのレンタルが可能なサービスにより、この施設のコンセプト「住民のリビング」としての居心地の良さが体現されていました。

視察を通しての感想として、西村さんはDDWについて、「出展者が作品の披露だけを目的としていない点が印象的でした。自分の視点で問題提起を行い、それに応える形でアウトプットを展示することで、新たな視点やメソッドを共有する場を作り上げていました」と述べています。

また厚見さんは、オランダとフィンランドへの訪問を通じて得た印象として、「ブランディングの考え方が浸透しており、統一されたシステマチックなデザインが多く見られました。デザイン側が過剰に伝えてこない分、生活者が主体性を持ってものを選べるよさがあると感じました」と締めくくりました。